Mag-log in長谷川日葵と清水壮一は生まれたときから一緒。当たり前のように大切な存在として大きくなるが、お互いが高校生になったころから、二人の関係は複雑に。決められたから一緒にいるのか?そんな疑問を持ち始めた壮一は、日葵にはなにも告げずにアメリカへと留学をする。何も言わずにいなくなった壮一に、日葵は傷つく。そして7年後。大人になった2人は同じ会社で再会するが……。 ずっと一緒だったからこそ、迷い、悩み、自分の気持ちを見失っていく二人。
view more「日葵、おい、日葵」 少し身体を揺すられ、重たい身体を感じながら目を開けると、目の前に壮一の顔があり、日葵は思わず驚いて目を見開いた。「何、そんなに驚いてるんだよ」 くすりと笑った壮一に、日葵は昨夜のことを思い出して顔が熱くなる。「お前、思い出してるな?」 何もかもお見通しのように言われ、日葵はムッとして睨みつけるように壮一を見返す。「そんな顔も俺には煽りでしかない。可愛い」 その言葉と同時に、シーツの中で壮一の手が不埒な動きを始め、日葵はビクリと身体を震わせる。「って、違う違う!」 自分を律するように言いながら起き上がった壮一の動きで、日葵の裸の身体が露わになり、慌ててシーツを引き寄せた。「ああ、もっと日葵とベッドにいたいけど……年が明けるな」 「えっ!」 その一言で、今日は大晦日だったことを思い出す。さすがにこのままの姿で年を越すのは……と、日葵も急いで身体を起こす。ベッドの下に落ちた下着に手を伸ばしたそのとき、背後から壮一が覆いかぶさってきた。「やっぱり、年越しはやめて、ベッドで過ごそう?」 甘く艶っぽい声に、日葵も一瞬だけ心が揺れるが、グイッと壮一を押し返して真剣に見つめる。「来年は、ずっと一緒にいられるんでしょ?」 自分でも恥ずかしいセリフに思いながらも、しっかりと伝えると、また壮一のため息が聞こえる。「お前って、ほんと昔から変わらないな。俺を振り回す天才……」 そう言いながらキスを落とされ、唇が離れる頃には、日葵の呼吸はすっかり乱れていた。そんな日葵を満足そうに見つめると、壮一は「この続きは、また来年」と言って、ベッドから立ち上がった。「そうちゃん! 服、着てよ!」 「年を越す前に、シャワー浴びてくるよ」 その言葉に、日葵も急いで服を引っかけると、壮一に言葉をかけた。「私も、いったん部屋に戻ってシャワー浴びてくる」 「一緒に入る?」 悪びれもなく返ってくる言葉に、日葵はぶんぶんと首を振って否定する。さすがにそれは、まだハードルが高い。「私の部屋の方が色々あるから、後で来てくれる?」 年越しそばのことや、母が持たせてくれた料理のことを思い出しながらそう言うと、浴室から「わかった」と返事が返ってきた。部屋に戻った日葵は、大きく息を吐く。 さっきまでの甘い余韻が身体に残っていて、ようやく壮一とひとつに
「日葵だけが俺には特別だ。愛してるよ」その言葉にとうとう日葵の瞳から涙が零れ落ちる。この言葉がどれほど自分が嬉しいか言われてわかった。「私もそうちゃんだけだよ」泣き笑いで言うと日葵はそっと壮一の頬に触れた。その手を壮一が自分の手で握りしめる。「日葵のこと、大切にしたい。今の余裕のない俺じゃないときにしないとな」そう言うと、壮一は日葵の上から降りようとするのがわかった。「ダメ!」つい無意識に言葉が零れ落ちていて、日葵は自分に驚いて手で口を覆う。「日葵……?」(でも、でも、ここで勇気を出さなければ、また次の機会ははずかしくなっちゃう)日葵はそう思うと、壮一にゆっくりと語り掛ける。「そうちゃんのものになりたい……」自分の顔が真っ赤なのも、心臓の音がうるさいのもわかっていたが、これだけはきちんと伝えたかった。壮一が自分のことを考えてくれているのが分かったからこそ、もうこれ以上遠回りをしたくなかった。驚いたような表情の壮一の瞳がそっと閉じられたと思えば、次に見たその瞳は妖艶で熱を孕んだ初めて見るものだった。しばらく動きが止まっていた壮一だったが、何か覚悟を決めたような表情で日葵を見た後、無言で子供の頃のように日葵を抱き上げる、そのことに驚いて日葵は声を上げた。「ちょ……そうちゃん!」急にどうしたかと思えば、そのまま壮一の寝室へと向かうのがわかった。自ら誘う形になってしまった日葵だったが、ドキドキしてどうしていいのかわからない。そっと優しく真っ白なシーツに降ろされたときに、今から自分に起こることが知識として頭をグルグル回る。そんな日葵の瞳に、真面目な表情の壮一が映る。「日葵……俺が初めて?」その問いに、少し悔しくなりつつ日葵はうなずく。きっと勝ち誇った顔をしているのかと、日葵はチラリと壮一を見れば、そこには日葵の思う壮一ではなかった。「よかった……。間に合った……」心から安堵しているような壮一に、日葵は柔らかく微笑むと言葉を重ねる。「キスも全部そうちゃんしか知らないんだから責任取ってよね」その言葉にきょとんとした後、壮一は日葵の大好きな笑顔を見せた。「当たり前だ。日葵は何も考えなくていい。ただ俺を見てろ」言葉はそんな命令口調だが、日葵に触れる手はこれでもかというぐらい優しい。そのことが日葵は嬉しくて、キュッと心が締め付けられ
遠くない二人のマンションに着くと、壮一は無言のまま日葵の手を引いて自分の部屋の鍵を開けた。こんなに近くにいたのに、壮一の部屋に入るのは初めて。日葵は思わず緊張し、胸が高鳴る。「入って。特に何もないけど」「おじゃまします……」日葵の部屋には何度か壮一が来たことがある。でも、自分が彼の部屋に入るのは、それだけで特別なことのように感じてしまう。間取りはまったく同じなのに、部屋の雰囲気はまるで違っていた。整然としていて、ものが少なく、生活感がほとんどない。「何もないだろ? 寝るだけの部屋だから」ソファー、テーブル、テレビ……最低限の家具があるだけの空間に、日葵はなぜか落ち着かない気持ちになる。同じ空間にいながら、これまでとはまったく違う意味で“二人きり”でいることに、息が詰まりそうだった。「そうちゃん、忙しかったもんね」少しでも平静を保ちたくて明るく声を出し、部屋の中をぐるりと見渡していた日葵は、ふとソファに座る壮一の視線に気づく。「日葵」やさしく甘やかなその声に、思わずビクッと肩が跳ねた。ただ見つめられているだけなのに、何も言われていないのに、なぜか足が勝手に動く。ゆっくりと、日葵は壮一の座るソファへと歩を進める。すぐ目の前まで来たとき、壮一が何も言わずに手を広げた。(来いって、こと……?)ごくりと唾を飲み込んだ日葵は、悔し紛れのように言う。「そうちゃんってやっぱりイジワル」でも、そのとき向けられた壮一の笑顔が、あまりにも優しくて、懐かしくて――日葵は胸がいっぱいになる。「だって俺、ずっと我慢してたんだよ? 日葵に触れるのを。 でも今、急に変わった関係に戸惑ってるだろ?」図星を突かれ、日葵は言葉に詰まる。でも――「それ、違うよ」「え?」そのまま、日葵は勢いよく壮一の腕に飛び込んだ。予想外の行動に、壮一の腕は宙に浮いたまま動かない。「急に変わった関係に戸惑ってるんじゃない。 もっとそうちゃんに近づきたい。抱きしめてほしい―― そんな気持ちが自分の中にあることに、驚いてるだけなの」首に腕を回し、顔を隠すように埋めると、そっと耳元で囁いた。「……初めてなの。こんな気持ち」少し息を詰めるような壮一の声が返る。「初めてって……崎本部長は?」「付き合ってなんかないよ。ずっと好きって言ってくれてたけど、どうしても無
会社を出て、壮一の車で実家へ向かう途中。車内は温かく、静かで、どこか落ち着かない空気が流れていた。壮一は黙ったまま、日葵の手を弄ぶように優しく指先を触れてくる。今までとは明らかに違う。日葵の中に、得体の知れないドキドキが広がっていく。「……日葵、ドキドキしてる?」「なっ……別にしてません!」つい、嘘をついたことがすぐにバレる。「俺はしてるよ。小さいころとは違う“女”の日葵に」「なっ……!」言葉にならず、パクパクと口を動かすだけの自分が情けない。ちょうど赤信号で車が止まったところで、壮一がそっと手を握りしめ、身を乗り出してくる。「壮……」「もっとこの関係に慣れろよ」妖艶で綺麗すぎる顔が、今、自分だけを見ている――それだけで、鼓動は爆発しそうなほど跳ね上がる。目を見開いたままの自分に、そっと優しいキスが落とされる。そして唇が離れたあと、まっすぐに見つめてくる壮一の瞳に、日葵は息を呑んだ。(もうダメ……嬉しすぎて、苦しい……)信号が青に変わると、壮一は何事もなかったかのように車を走らせる。その横顔を見つめられずに、日葵は視線を窓の外へ向けた。煌びやかな街の灯りが、年の瀬を静かに彩っている。(この年で……本当の恋を知るなんて)心の奥で、静かに大きなため息をついた――それは、戸惑いと幸せが入り混じった音だった。「全員揃うのは何年ぶりだろうな」誠と弘樹の会話で始まったその会は、莉乃の手料理を囲みながら、和やかに進んでいた。久しぶりの年末の年越しはとても賑やかで、壮一も、誠真たちと久しぶりの再会を楽しそうに過ごしていた。その様子を見ているだけで、日葵は胸がいっぱいになるほど幸せだった。「そういえば咲良ちゃん、誠真がいろいろ待たせて不安にさせたんだって?」彼女の咲良とは今日が初対面。隣で控えめに笑う咲良に日葵が声をかけると、彼女は小さく頷いた。「そうですね。初めは何も言ってくれなかったので……」「ほんと、ひどい奴よね。ごめんね」笑いながら話していると、どこか慌てたように誠真がこちらに駆け寄ってきた。「姉貴、変なこと言ってないよな?」普段は余裕たっぷりで軽薄な印象さえある誠真の、焦った表情が珍しくて、日葵はついクスッと笑ってしまう。「こんな誠真、初めて見たかも」「うるさいよ」言い返す誠真がムッとした顔で日葵を見